「ITの経営活用」と一言で言ってもその内容は千差万別です。業務活用の視点からみると、単にワープロ代わりに納品書や請求書を印刷する段階から高度な売上分析により需要予測する段階まで種々あります。また、取引先との情報伝達手段の視点から見ると、電子メールで取引先と連絡する程度から取引先との電子商取引までのレベルが存在します。
ITの活用を考える場合、自社の現在の経営レベルはどれくらいで、将来的にはどの経営レベルまでを目標とするのか。そのためにはどういった優先順位をつけてITを導入するのか明確にしておかないと、せっかく導入した情報システムも使いこなせないばかりか、逆に業務の効率を落としてしまうことにもなりかねません。
また、将来の会社の規模を想定した上で情報システムにある程度拡張性をもたせて考えておかないと、二重投資になってしまう恐れもあります。常に組織のレベルと情報システムはリンクさせて考えておくことが効率的で効果的な組織経営の上で不可欠と言えるでしょう。
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※組織のライフサイクル
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組織のレベルを考える上で有効と考えられるのが、「組織のライフサイクル」という考え方です。「組織の経済学」(リチャードL.ダフト著 ダイヤモンド社)中で組織の発達段階を4つのステージに分類して考察してあります。
第一段階は「起業者段階」というものです。創業者が創造的な新製品や新サービスをもって起業する段階です。組織は経営者個人のコントロールで行われ、非公式かつ非官僚主義的な状態になっています。
第二段階は「共同体段階」とされるものです。組織は明確な目標と方向性を策定しはじめ、権限の階層構造、職務の割り当て、当面の分業が確立します。従業員は共同体の一員という意識が強く、コミュニケーションやコントロールはまだ非公式の部分も多いとされています。
第三段階は「公式化段階」とされるものです。この段階では、ルール、手順、コントロール・システムが導入され利用されるようになります。ミドル・マネージャの役割が大きくなり官僚化が進んでいきます。目標が外部から内部の安定に向いてしまうことも発生します。
第四段階は「精巧化段階」と呼ばれ、成熟段階に達します。組織は、大規模かつ官僚主義的で、包括的なコントロール・システムやルール、手続きを有します。この段階に達すると組織の刷新やイノベーションを行わないと徐々に衰退していく可能性があります。
それぞれのステージにおいて組織の「危機」を内包しており、その危機を乗り越えることで次の段階に移行していくものの、「こうした移行にかかわる問題をうまく解決できない組織は、成長が制限され、倒産する場合さえある」と述べられています。
このような組織のライフサイクルを基にして、それぞれのステージにおけるIT導入のポイントを考えてみましょう。
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※起業者段階における情報システム
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この段階での最初の課題に「定型業務の効率化」があげられます。起業者段階では少ない資源で市場に立ち向かわないといけないため、当然経営者は新しい製品の開発や新しい顧客の開拓に全精力を注ぐことが必要になります。しかし一方、会社を順調に機能させるには納品書や請求書発行、仕入管理、在庫管理など間接的な業務が欠かせません。これらの業務は定型的でシステム化しやすいため、そのIT化が最初に取り組むべき課題になります。少ない人的資源をより高付加価値な業務に振り向けるために、定型的な業務は少しでもIT化して省力化するべきです。
この段階では会社の規模も小さく、十分に投資できる余裕も少ないため、市販のソフトウェアを導入して対応することが合理的です。それで対応しきれない部分は、表計算ソフトなどを使ってフォーマットを作成し、活用する方法が考えられます。また、少し勉強して市販のデータベースソフトを使った簡単なデータ管理も有効な方法です。 IT導入費用を抑えたい場合はASPサービスを利用する方法もあります。ASPはインターネットを通じて色々なソフトウェアサービスを受ける形態です。ネット接続環境さえあれば、ソフトのインストールやメンテナンスの手間が省け、また費用も月額払いになるので、初期投資が少なくて済みます。
将来的に会社の規模を大きくすることを前提とした場合、この起業者段階でなるべく業務を複雑化しないように留意すべきでしょう。つい、行き当たりばったりで継ぎはぎの業務運営になりがちですが、なるべく業務をシンプルにすることを心がけることで、後々のシステム化がやりやすくなります。
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※共同体段階における情報システム
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この段階での第一の課題は、「分業を前提とした業務のシステム化」になります。分業化された各々の業務をいかに効率よくする。また、業務間の情報のやり取りを正確にかつスムーズに行うといった点に留意する必要があります。
前の「起業者段階」では、業務の処理手順が経営者もしくは担当者の頭の中にしかないという状態になりがちです。ところが、分業化されるとそれでは業務がスムーズに流れません。まずは、それぞれ担当者の頭の中にある業務手順を確立し文書化することで目に見える形にすることが最も重要な課題です。その上でコード体系の統一化やデータの受け渡し方法などのルール化をすすめます。部分的な情報システムから全社システムへ発展させるための基盤作りとして位置づける必要があるでしょう。
定型的な業務のシステム化の一方で、競争力の源泉となる固有技術の強化にITを活用することも必要になってきます。製造業の場合はCADやCAMの活用、卸売業の場合はピッキングシステムや配送システムの導入、小売業の場合POSシステムや顧客管理システムなどの導入があげられます。「自社の強みは何なのか」をしっかり分析した上で、その強みを発揮させるためのシステム化を検討します。
またこの段階では、ほぼすべての社員がパソコンを操作できることが前提になってきます。それも単にパソコンソフトが使えるだけでは十分と言えず、データを入手し、表計算ソフトなどで有用な情報に加工するスキルも求められます。個々の社員ITスキル向上意欲に頼るだけでなく、会社としてIT教育を行う仕組みを作ることも必要となるでしょう。
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※公式化段階における情報システム
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この段階は、良くも悪しくも「官僚主義化」が進行するステージです。前例主義や縦割りの弊害が発生しやすくなります。また、中間管理職のマネジメントコストも高くなります。こうした問題を全社最適の視点から解決することに主眼をおくことが求められます。 そのひとつの方法に、部門内・部門間両方のコミュニケーションを円滑にするためのIT活用があります。具体的には、イントラネットやグループウェアの活用です。イントラネットを有効に使えば、必要な情報がどのパソコンからもブラウザを使ってみることができるようになり、業務担当者の負担が増えることなく情報共有が実現できます。また、グループウェアの電子メール、掲示板、スケジュール管理や施設管理などの機能を使えば、連絡や調整がスムーズになると同時に、連絡の履歴が残ることでトラブルを避けることもできます。
さらには、グループウェアの中のワークフローという機能を活用すればマネジメントコストを削減することも可能になります。ワークフロー機能により、旅費や経費の承認、稟議書の決裁を効率的に進められます。また、同時決裁や決裁状況を随時確認できるため、稟議が滞る事態も回避できます。ただ、システムを導入するだけでは十分な効果があるとはいえません。本当に稟議が必要なものかどうか、稟議ルートをもっとシンプルにできないかなどの見直しも含めて改善することでさらに効率的な組織運営ができるでしょう。
情報の共有化を進める上で留意しておくべき点は、情報が正確でタイムリーでなければいけないということです。その大前提となるのがデータの一元化です。クライアントサーバ型のシステム構成にし、見積、受注、出荷、請求、回収といった一連の業務のデータを一元管理すること。そして各部門においては、一元化されたデータを基にして部門ごとに必要に応じて加工された情報を利用するという仕組みの確立が求められます。
また、このレベルの組織になると、対外との情報のやり取りも必要になってきます。ネットワークを活用した取引先との情報共有や電子商取引も含めたシステムが必要となります。
こうした、社内データの一元管理、社外との情報連携を考えると、ある程度大掛かりにシステム再編を考えないといけない時期になります。統合パッケージ(ERP)や管理会計システムなど高度なシステムを自社に合った形で導入すれば、競争力の強い高度な経営を確立する基盤になり得ます。費用対効果も考慮に入れ、将来を見越したシステム設計が必要です。
またこの段階では、一人一台にパソコン配備は当然となっているでしょう。そうなるとパソコン及びその周辺機器の台数はかなりの数にのぼります。ハード、ソフト両面でのシステム運用や管理のためには情報システムの専門部署を設け、組織横断的にシステム管理していくことが必須となります。また同時に、情報セキュリティの面での仕組みづくりも避けることができなくなります。
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※精巧化段階における情報システム
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この段階に達している会社は、すでにかなり高度な情報システムが構築されているでしょう。この段階で求められるのは、「経営革新」を目指したIT活用になります。いままでのやり方を刷新し、新しいビジネスモデルを確立するためにいかにITを活用するのかという視点が欠かせません。
新しいビジネスモデルを考える場合には、情報技術の新しい流れには常に注目しておかねばなりません。インターネットやモバイル技術を活用していくことはもちろんのこと、GPSやICタグなどの活用事例にもアンテナをはり、自社の経営に取り入れられるものかどうか、取り入れる場合はどういった方策をとるのかといった判断が求められます。
別の視点から「経営革新」に向けてポイントとなるのは、「開かれた組織」を目指すことです。組織の内側の知恵、外側の知恵を最大限引き出して活用する方向性を持たなければ、組織は内向きになり衰退してしまいます。
そのためのひとつは、顧客の持つ情報を取り込むための活動です。顧客情報を収集する目的を明確にし、インターネットなどを最大限の活用して情報を収集し、その収集した情報をデータベース化する仕組みを整えることが求められます。
もうひとつは、社員の持つ知識のより有効な活用です。いわゆるナレッジマネジメント(知識経営)と呼ばれるものです。単に社内に蓄積された情報を共有するだけでなく、社員の持つ表面的な知識から表面化できていない知識までも、さらにはその知識の背景も含めて共有化していこうとするものです。どういう情報を収集するためにどういう方法をとるのかといったことについて定型化が困難な分野であり、IT化も一筋縄ではできませんが、経営層とIT担当者の知恵と技術を融合させて進める必要があるでしょう。
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